この記事でわかること
- FtMの妊活方法
- セルフシリンジ法の流れ・やり方
- セルフシリンジ法で必要なもの
戸籍変更が済んで結婚できるようになると、次に考えるのは子作りについてですよね。
FtM当事者やパートナーの方は、どういう風に妊活していけばよいのか迷ってしまうと思います。
この記事では、FtM当事者である筆者が妻との子どもを授かることができた「セルフシリンジ法」についてご紹介。
どのような妊活方法があるのかとともに、シリンジ法のやり方や必要なツールなどについて解説します。
この記事を書いているのは・・・
埋没くん(GIDラボ運営者)
幼少期から自分の性別に疑問を感じており、16歳で「性同一性障害」の診断を取得。17歳からホルモン治療&埋没生活を開始⇨19歳で胸オペ⇨23歳で子宮摘出手術&男性へ戸籍変更。今では9割の友人・知人がFTMであることを知らない。北海道出身、20代後半、1児のパパ。
▼時間がない方は読みたいところからチェック!
FtMの妊活方法はおもに2種類
はじめに、FtMとパートナーの妊活方法にはどのようなものがあるのかを解説します。
FtMの妊活方法は、筆者が行った「セルフシリンジ法」と医療機関で行う「AID」の2種類です。
それぞれの方法についてご紹介しますね。
1.セルフシリンジ法
シリンジ法は、医療用のシリンジキットを用いて第三者の精子をパートナーの子宮内に注入する方法です。
セルフシリンジ法とは、採取した精液を、シリンジ(針のない注射)を使ってご自身で腟に注入する方法です。
引用:医療法人オーク会
FtMの場合は兄弟や父から精子提供を受けることで、パートナーとの間に血縁関係のある子どもを授かることができます。
自宅で行うことができるため、医療機関にかかることなく手軽に行えるのが特徴です。
セルフシリンジ法のやり方など詳細については、このあとで詳しく解説していきますね。
2.AID(非配偶者間人工授精)
AID(非配偶者間人工授精)は、第三者から精子提供を受けてパートナーの子宮に人工授精する方法です。
AIDとは無精子症など絶対的男性不妊の場合に適用される方法です。ご主人以外の男性ドナーの精液を使用し人工授精にて妊娠を試みます。
引用:はらメディカルクリニック
セルフシリンジ法との違いは、医療機関で行うという点、採取した精子を洗浄・濃縮してから注入するという点ですね。
また、AIDは日本産科婦人科学会の規定によって、身内からの提供は原則できないことになっています(参考:はらメディカルクリニック)。
セルフシリンジ法より金額もかかりますが、きちんと医療機関で行いたい、安全性を重視したいという方にはおすすめです。
セルフシリンジ法を行うまでの流れとやり方
次にセルフシリンジ法を行うまでの流れと、どのような方法で行うのかを解説していきます。
セルフシリンジ法を行うまでの流れは下記のとおり。
step
1パートナーとよく話し合う
パートナーとよく話し合い、お互いの気持ちなどについて確認しておきます。
具体的には下記のようなことを話し合って決めておくとよいです。
- セルフシリンジ法でよいのか
- 精子提供者を誰にするのか
- どのくらいの期間実施するのか
子どもにどのような経緯で授かったかを伝えるか否か、などについても話し合っておきましょう。
step
2精子提供を受けられるか確認する
精子提供者を誰にするか決まったら、相手に協力を得られるか確認しましょう。
親族などではない第三者から提供を受ける場合は、トラブルがないよう注意しておく必要があります。
筆者は弟から提供を受けるために、子どもを授かりたいこと、シリンジ法という方法がることなどを話して許可をもらいました。
step
3排卵日を確認して実施日を決定する
ルナルナアプリなどを用いて排卵日が特定できたら、実施日を決めていきます。
排卵予定日の3日前〜排卵予定日の翌日までの5日間が妊娠しやすい期間です(参考:ロート製薬)。
上記の期間内で自分やパートナー、精子提供者の3人が合わせられる日程を選びましょう。
私と妻の場合は排卵予定日の2日前から排卵予定日にかけて連続で3日間行いました
セルフシリンジ法のやり方
セルフシリンジ法の準備が完了したら、あとは実施するだけです。
セルフシリンジ法のやり方は簡単で、下記の5ステップで進めます。
- 精子提供者に精子を採取してもらう
- カテーテルとシリンジを準備する
- 採取から10分〜15分後に精子をキットで吸引する
- 吸引した精子をパートナーの子宮内に注入する
- 10分〜30分ほど横になったままリラックスする
上記の所要時間はおおよそ30分〜1時間ほど。
精子提供者にどこで精子を採取してもらい、どこでシリンジ法を実施するのかは人によって異なります。
できれば、シリンジ法の実施は自宅のほうがリラックスして行うことができるでしょう。
セルフシリンジ法に必要な物
セルフシリンジ法はシリンジキットさえあれば行うことができます。
しかし、排卵日を特定してなるべく少ない回数で成功させるためには、それだけでは難しいでしょう。
筆者が妻とセルフシリンジ法に利用していた物をまとめてみました。
シリンジキットや基礎体温計はどれを使えばいいか悩んでしまいますよね。
筆者の場合は何日もかけて調べた結果、もっとも良いと思ったものを購入して1周期目で成功しました(※)。
それぞれどれを使えばよいのか紹介しますので、参考にしてみてください。
※妊娠のしやすさは体質や年齢などによって個人差があります。
シリンジキット
シリンジキットは医療用のカテーテルとシリンジ、採精器がセットになっているものです。
Amazonや楽天で販売されており、10回〜20回分で1セットになっています。
価格はおよそ8,000円〜10,000円となっており、1回あたりに換算すると400円〜1,000円ほど。
病院で行うAIDは1回あたり20,000円〜30,000円ほどかかるので、かなり安価に行うことができます。
20回分で8,000円と安価なのと、初心者でも使いやすいので良かったです
基礎体温計
基礎体温計は排卵日を特定するのに欠かせないツールです。
普通の体温計よりも細かく表示されるようになっており、正確に基礎体温を測ることができます。
基礎体温計はドラッグストアやネット通販などで購入することができて、価格は2,000円〜4,000円ほど。
基礎体温をつけていなければ、妊娠しやすい排卵日を特定することができません。
妊活を始めるなら、最低でも3カ月前から基礎体温を測っておくことが大切です。
妻の場合はルナルナアプリにデータ転送できる「TDKの婦人体温計」を使用。楽に管理できるためズボラな妻でも続いていました
ルナルナアプリ
ルナルナアプリは基礎体温を管理するスマートフォンのアプリです。
パートナーの生理予定日や基礎体温を記録しておくことで、排卵予定日を自動で算出してくれます。
先ほどご紹介したように、ルナルナアプリと連動できる基礎体温計もあるため、妊活に使うと大変便利です。
ルナルナの排卵予定日をもとに実施し、1周期目で成功したのでかなり正確だったのだと思います
妊娠検査薬
シリンジ法を行うためには必要ありませんが、妊娠検査薬も買っておくとよいです。
妊娠検査薬はシリンジ法を実施してから、次の生理予定日を1週間過ぎてもこなかったときに使用します。
検査するタイミングで購入してもよいですが、事前に買っておくとすぐに調べられるので便利です。
尿をかけてから数秒ですぐに線が出たらしく、使いやすかったそうです
FtMがシリンジ法で子どもを授かった体験談【妻の妊娠まで】
ここからは、Ftm当事者である筆者のセルフシリンジ法の体験談をご紹介。
筆者の場合は、セルフシリンジ法を用いて1周期目で妻が妊娠しました。現在は妊娠6カ月で順調に育っています。
1.妻がルナルナアプリで基礎体温を計測
妊活を始める半年ほど前から、妻がルナルナアプリと基礎体温計を使って基礎体温を記録し始めました。
ずっと付けてくれていたので、体温の下がる低温期と体温の上がる高温期がなんとなく分かるようになりました。
記録する期間が長いほどルナルナで表示してくれる排卵予定日も正確になります。
2.弟と話し合って了承を得る
精子提供者を筆者の弟にすると決めていたため、排卵予定日がなんとなく分かってきたころに連絡。
弟と直接会ってシリンジ法を行いたいこと、精子提供をしてほしいことなどを30分ほど話しました。
10代のころから「いずれ協力してもらうかもしれない」と話していたこともあり、すんなりOKしてくれたのが嬉しかったです。
3.シリンジキットを購入
いよいよ準備も整ってきてあとは実施するだけという状況だったので、Amazonにてシリンジキットを購入。
The医療器具という感じで届いたので、「いよいよ本当にシリンジ法を実施するんだ…!」と緊張したのを覚えています。
箱のなかには「シリンジ法キットのご使用方法」という説明書と医療機器の用紙?、シリンジキットが入っていました。
4.排卵日の3日前から連続で実施
準備が整ったので、妻の排卵日にあわせて3人で日程を調整。
仕事の都合で3人とも夜しか都合が合わなかったため、排卵日の2日前から連続で3日間行うことにしました。
当日は弟にこちらの家まで来てもらい、採精器に採取してほしいこと、なるべく精子が空気に触れないようサランラップをかけておいてほしいことなどを説明。
筆者と妻がいると採取しにくいと思ったので、弟が採精している間は家を出て買い物や散歩に行っていました。
連絡がきてから自宅に戻って弟には礼を告げて帰宅してもらい、ベッドの上で横になった妻に精子を注入。
工夫したこととしては下記のとおりです。
- 注入した精子が漏れないよう、妻の腰の下にクッションを置いて高くした
- 奥に深く入れ過ぎない程度にシリンジを挿入し、やや勢いよく注入した
また、シリンジ法が終わったあとに妻はそのまま熟睡していました(笑)。
本当は30分ほど横になるくらいでよかったのですが、これが逆に良かったのかもしれません。
5.生理予定日から3週間後に妊娠発覚
シリンジ法を行ってから3週間後、妻にまだ生理がきていないこと、ずっと基礎体温が高いままであったことから、「妊娠したのでは?」という話になりました。
確信がもてなかったため、ドラッグストアで妊娠検査薬を購入。
自宅で妻が妊娠検査薬を使ってみると、すぐに陽性反応が出て2人で驚いたのを覚えています。
その後すぐに産婦人科へかかり、無事に妊娠確定診断を受けることができました。
まとめ
FtMの妊活方法とセルフシリンジ法のやり方、筆者の体験談などをご紹介しました。
赤ちゃんは授かりものなので絶対に授かることができるとはいえません。
しかし、金銭的に負担の少ないセルフシリンジ法はおすすめの方法です。
これから妊活したいと考えているFtMとパートナーの方々は、セルフシリンジ法を試してみるのも1つの方法ですよ。