この記事でわかること
- 性同一性障害の種類や原因
- 性同一性障害の特徴
- 性同一性障害の診断方法
- 性同一性障害は治るのか
最近ではテレビやニュースで取り上げられることが多い性同一性障害。
『心と身体の性別が一致しない人』とザックリは知っていても、原因や特徴などについてはわからないですよね。
この記事では、性同一性障害とはどういったものなのかを詳しく解説します。
この記事を書いているのは・・・
埋没くん(GIDラボ運営者)
幼少期から自分の性別に疑問を感じており、16歳で「性同一性障害」の診断を取得。17歳からホルモン治療&埋没生活を開始⇨19歳で胸オペ⇨23歳で子宮摘出手術&男性へ戸籍変更。今では9割の友人・知人がFTMであることを知らない。北海道出身、20代後半、1児のパパ。
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性同一性障害(性別違和)とは?
性同一性障害(性別違和)とは、身体の性別と本人の性自認が一致していない人のことを指します。
別名で「GID(Gender Identity Disorder)」や「トランスジェンダー」ともいいます。
性同一性障害とは、生物学的な性と性別に関する自己意識(以下、「性自認」と言う。)が一致しないため、社会生活に支障がある状態とされます。
出典:文部科学省
一般的に「性別」は、身体が男性と女性のどちらであるかによって決められますよね。
ほとんどの人は身体で決められた性別に違和感をもたず成長しますが、性同一性障害の方の場合はそうではありません。
性同一性障害の方は、子どものころから身体的な性別とは反対の性別としての認識があります。身体も心も成長していくにつれて、自分の身体や社会的な認識に違和感を感じてしまうのです。
性同一性障害の原因については、次項で解説しています。
性同一性障害の種類
性同一性障害の種類は「FTM」と「MTF」の2種類。
- FTM(Female to Male)
生まれもった身体が女性、性自認が男性の人のこと。 - MTF(Male to Female)
生まれもった身体が男性、性自認が女性の人のこと。
基本的には、出生児の性別がどちらにあるのかによって異なります。
性同一性障害の人口割合
LGBT研究所や日本労働組合総連合会による調査では、性同一性障害の割合は1.8%という結果が出ています。
つまり、100人に1人〜2人が性同一性障害を抱えているのです。
出典:「LGBTに関する職場の意識調査」日本労働組合総連合会
「思っていたよりも多いな」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
性同一性障害を含むLGBT全体でみると10%となっており、10人に1人がセクシャルマイノリティー(性的少数派)。
あなたやご家族が性同一性障害だとしても、けっして珍しいことではないのです。
性同一性障害の原因
性同一性障害の歴史が浅いことなどから、原因はまだ解明されていません。
しかし、性同一性障害の原因としていくつかの説が提唱されています。
2021年時点でもっとも有力な説とされているのは「身体の性別とは反対に脳の性分化が行われた」というもの。
人間は胎児のときに身体が形成されていく段階で、さきに身体の性別が決まり、そのあとで脳の性別が決まります。
この脳の性分化が行われるときに「なんらかの理由で身体的性別とは一致しない性分化が行われたのではないか」という説です。
大阪医科大学の准教授・康純氏も下記のように述べています。
現段階でいえることは、生まれつき体の性と心の性が異なっているという感情を持っている人たちのなかには、生物学的な問題という背景がある方は存在するだろうということです。
出典:Medical Note
性同一性障害はまだまだ研究が進んでおらず、原因について解明されていないものの、脳と身体の性分化が関わっている可能性があるのです。
性同一性障害の特徴は5つ!
性同一性障害の方には5つの特徴があります。
人によって程度は異なりますし、すべての特徴に必ず当てはまるわけではありませんが、今後の参考に知っておきましょう。
性同一性障害の5つの特徴
- 子どもの頃から反対の性としての遊びを好む
- 身体に違和感や嫌悪感がある
- 反対の性の身体になることを望む
- 身体とは反対の性だと強く感じている
- 身体と同じ性役割を求められても拒む、嫌がる
※当てはまっていても性同一性障害とは限りません。自己診断はせずに精神科を受診しましょう。
1. 子どもの頃から反対の性としての遊びを好む
女の子ならおままごとや人形遊び、男の子ならヒーローごっこなど、一般的にはジェンダーによって好む遊びも違いますよね。
性同一性障害の方の場合は小さい頃から、身体的な性とは反対の性としての遊びを好む傾向があります。
例
- (出生時の性別が)女の子の場合
ヒーローごっこを好む - (出生時の性別が)男の子の場合
おままごとを好む
もちろん、性同一性障害ではなくても井手上漠さんのように、身体的な性とは反対の性の遊びを好む方もいます。
あくまでも1つの特徴として考えてください。
親は男まさりだなぁ、と思っていたそうです(笑)
2. 身体に違和感や嫌悪感がある
自分の身体に違和感や嫌悪感を感じるのも、性同一性障害の特徴の1つです。
生まれもった身体的な性とは反対の性自認があるため、自分の身体が気持ち悪いと感じてしまうのです。
人によっては胸や性器を傷つけたりしてしまうことも…。
自分が望まない変化は、当事者にとってすごく苦しいものです。
3. 反対の性の身体になることを望む
性同一性障害の当事者は、生まれもった身体とは反対の性(性自認である性)の身体になることを望みます。
性自認と身体が合っていないことで辛さを感じているため、本来のあるべき姿になりたいと思うわけです。
4. 身体とは反対の性だと強く感じている
先ほどと似ていますが、身体的な性別とは反対の性であると強く感じていることも特徴の1つです。
ご両親からすると、何かの影響や思い込みなのでは?と思うかもしれませんね。
しかし、これは脳の性分化に関わることです。どのような環境下にいても、性自認は変わりません。
5. 身体と同じ性役割を求められても拒む、嫌がる
自分とは反対の性役割を求められると拒否したり、嫌がるのも特徴の1つです。
たとえば、FTM(身体は女性・性自認は男性)の場合なら、女性トイレを使うのがイヤだったり「女の子なんだからこうしなさい」といった言葉に強く反発したりします。
性同一性障害の診断方法は?
性同一性障害の診断は、性同一性障害に関する診断と治療のガイドラインに沿って下記の流れで行われます。
性同一性障害の診断の流れ
- ジェンダー・アイデンティティの判定
- 身体的性別の判定
- 除外判定
- 診断の確定
診断には精神科医2人以上の診断が必要で、大体は1つの病院で対応してくれることが多いです。
診断までに、ジェンダー・アイデンティティ(性自認)のチェックや身体的性別の判定などを行います。
診断までに要する時間は平均6カ月ほど。人によってまちまちですが、1年以内には診断が確定するといった流れです。
性同一性障害は治るの?思い込みもある?
性同一性障害のあるお子さんがいるお母さんやお父さんから、上記のような声をよく耳にします。
しかし、性同一性障害に"治る"という概念はありません。
性同一性障害の治療は、あくまでも性自認に合った身体に近づけること。本人の抱える生きづらさを解消するために行います。
子供のことや世間の反応を考えると、親御さんもなかなか苦しい問題ではあると思います。
しかし、性別というのはみなさんが思っている以上に曖昧なもの。身体的な性別でジェンダーが決まるわけではありません。
大切なのは、当事者である子どもたちがいかに自分らしく生きられるかです。
まとめ
性同一性障害(性別違和)の原因は、はっきりと分かっているわけではありません。
もっとも有力なのは、脳の性分化の過程で脳と身体の性別が異なったという説です。
もし、あなたが自分は性同一性障害なのではないか?と悩んでいるなら、まずはジェンダークリニックなどの専門的な病院で診察を受けてみてくださいね。