この記事でわかること
- 性同一性障害の診断テスト
- 診断を受けられる場所
- 診断方法や流れ
- 診断にかかる期間や料金
- 診断書をもらうメリット
性同一性障害の診断を受けられる場所や方法などについて知りたくても、情報を集めるのは大変ですよね。
この記事では、性同一性障害の診断を受けるための情報をすべてまとめています。診断を受けようと考えている方は必見です。
この記事を書いているのは・・・
埋没くん(GIDラボ運営者)
幼少期から自分の性別に疑問を感じており、16歳で「性同一性障害」の診断を取得。17歳からホルモン治療&埋没生活を開始⇨19歳で胸オペ⇨23歳で子宮摘出手術&男性へ戸籍変更。今では9割の友人・知人がFTMであることを知らない。北海道出身、20代後半、1児のパパ。
▼時間がない方は読みたいところからチェック!
性同一性障害(性別違和)の自己診断テスト
性同一性障害の正式な診断を受ける前に、自分が性同一性障害の特徴に当てはまっているのかを知っておくことも大切です。
性同一性障害の専門クリニックである『自由が丘MCクリニック』から、自己診断テストを抜粋しました。
性同一性障害(性別違和)の自己診断テスト | |
自分の性に関する以下に8項目あります。その人が体験し、または自認する性(ジェンダー)と、元の性との間に著しい不一致が、少なくとも6か月、以下の項目のうち6つ以上が当てはまる場合には、性同一性障害の可能性があります。 | |
反対の性になりたいという強い欲求、または自分は違う性であるという主張がある | |
男の子の場合(MTF)、女の子の服を身につけること、または、女装を真似ることを強く好む。また、女の子の場合(FTM)、典型的な男性の衣服のみを身につけることへの強い抵抗を示す | |
ごっこ遊びや空想遊びにおいては、反対の性の役割を強く好む | |
反対の性に定型的に使用されたり、または行われたりするオモチャやゲーム、またはその活動を強く好む | |
反対の性の遊び友達を強く好む | |
男の子の場合(MTF)、男の子に典型的なオモチャやゲーム、その活動を強く拒み、乱暴で荒々しい遊びを強く避ける。また、女の子の場合(FTM)、女の子に典型的なオモチャやゲーム、その活動を強く拒む | |
自分の性器の外観、構造を強く嫌う | |
自分の体験する性に合う第一次および/または第二次性徴を強く望む |
出典:性同一性障害、性別違和の診断テスト|自由が丘MCクリニック
※自己診断テストは、性同一性障害を診断するものではありません。性同一性障害の可能性があるかを個人で判断するものです。
他サイトでも性同一性障害の診断テストはありますが、「DSM分類(精神疾患の診断・統計マニュアル)」や「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」などの公的な根拠にはもとづいていません。
特徴に当てはまっていても性同一性障害だと決めつけずに、医師のいる機関で診断を受けましょう。
性同一性障害(性別違和)の診断はどこで受けられる?
性同一性障害の診断は、病院の精神科やメンタルクリニックで受けることができます。
ただし、どこでもよいというわけではありません。
GID学会に所属しているなど、専門的な知識をもつ精神科医がいる病院やクリニックでなければ診断を受けられません。
診断を受けることができる病院・クリニックを探す方法
当サイトでは、性同一性障害の診断を受けられる医療機関を一覧でまとめています。
病院なびやホスピタのような病院検索サイトを参考にするのもよいですが、実際に検索してみると性同一性障害の治療しか行なっていない(診断ができない)病院も多く表示されていました。
また、一般的には医療体制の整っている"医科大学附属病院"を受診するケースが多いです。
筆者の場合は、最初に某医大附属病院で診察を受けましたが精神科医との相性が悪く、東京都のはりまメンタルクリニックにかかりました。
お住まいの地域によっては、遠方でしか診断を受けられない可能性もあります。
診断には精神科医2人の診断が必要!
日本では、基本的に性同一性障害の診断・治療を「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」に沿って行っています。
精神科医はこのガイドラインに沿って診断や治療を行うことになっています。
このガイドラインでは、性同一性障害の診断には精神科医2人の診断が必要だと定められています。
2 人の精神科医が一致して性同一性障害と診断することで診断は確定する。
2カ所の病院やクリニックに行かなくてはならないわけではなく、1つの病院で対応してくれることもあるので事前に確認しておきましょう。
性同一性障害の診断方法や流れ
性同一性障害の診断は、性同一性障害に関する診断と治療のガイドラインに沿って下記の流れで行われます。
性同一性障害の診断の流れ
- ジェンダー・アイデンティティの判定
- 身体的性別の判定
- 除外判定
- 診断の確定
それぞれどういった方法で行われるのかについて、ご紹介していきますね。
1. ジェンダー・アイデンティティの判定
「ジェンダー・アイデンティティの判定」では下記のような流れで、担当の医師が本人の性自認は男女どちらにあるのかを明らかにします。
医師による聴取
担当医師がこれまでの養育歴や普段の生活、性行動について聴取していきます。
性別違和があるか検討
聴取した内容をもとに、医学的知識から性別違和があるのかを検討します。
ジェンダー・アイデンティティの判定
検討した結果、下記の3つがあるかを基準にジェンダー・アイデンティティがどちらにあるのか、担当医師が判定していきます。
- 自らの性別に対する不快感、嫌悪感
- 反対の性別に対する強く持続的な同一感
- 反対の性役割を求める
性同一性障害の診断では、初診時に"自分史"の提出を求められます。
自分史は、幼少期から現在までの生活や性行動をまとめたもの。自分史には、どんな子供だったか?なにが嫌だったか?いつどんな人を好きになったのか?などを記述します。
とくに形式などは決まっていません。
担当医師は自分史をもとに、本人が日常生活をどのように送ってきたのかについて詳しく聴取し、性自認がどちらにあるのか判定を行います。
2. 身体的性別の判定
ジェンダー・アイデンティティの判定が終わったら、つぎに「身体的性別の判定」を行っていきます。
ここでは生まれもった身体が女性または男性であるかを調べます。
なぜわざわざ調べるの?と思うかもしれませんが、実は性分化疾患などの身体的な異常によって性別違和を感じている場合もあるのです。
性同一性障害と性分化疾患は別物です。性同一性障害は「性分化疾患の亜種ではないか」という研究論文もありますが、ハッキリとは分かっていません。
そのため、性同一性障害の診断をするにあたり、染色体や内性器または外性器に異常がないのかを調べます。
検査内容をFTM(身体が女性で性自認は男性)、MTF(身体が男性で性自認は女性)別にまとめてみました。
婦人科医が担当します。
染色体検査、ホルモン検査、内性器・外性器の診察と検査などを行います。
泌尿器科医が担当します。
染色体検査、ホルモン検査、内性器・外性器の診察と検査などを行います。
検査した結果をもとに、精神科医が身体的性別の判定を行います。
3. 除外診断
ジェンダー・アイデンティティと身体的性別の判定が終わったら、つぎに「除外診断」を行います。
除外診断では、本人が性別違和を感じている理由に精神疾患や過去のトラウマなどが影響していないかを判断します。
4. 診断の確定
最後に、担当の精神科医が1〜3までの結果を総合的にみて、性同一性障害(正式には性別違和)の診断を確定します。
正式な診断には、担当の精神科医ともう1人の精神科医による2人以上の診断が必要です。
参考
精神科2人以上の診断といっても、かかっている病院・クリニック内で対応してくれることもあります。
事前に、診察を受ける予定の病院に聞いておくとよいでしょう。
性同一性障害の診断にかかる期間
性同一性障害の診断を受けるまでにかかる期間は平均6カ月ほどです。
通院頻度などにもよるので、人によって期間は異なります。早い人で3カ月、遅い人でも1年くらいで診断がおります。
最初に診察を受けてから1年以内には診断がおりる、と考えておきましょう。
ちなみに筆者のTwitterでアンケートを取ったところ、3カ月以内に診断がおりている方が多かったです。
みなさんがGIDの診断にかかった期間ってどれくらいですか?回答いただけると嬉しいです🙇♂️
— 埋没くん (@ftm_maruo) 2021年1月20日
なので、すでに治療を行っているということで取得期間は2日ほど。
これはイレギュラーなパターンなので、基本的には1年ほどかかることを頭に入れておきましょう。
性同一性障害の診断にかかる料金
性同一性障害の診断には、診察費用+各種検査費用+診断書代がかかります。
病院や診察回数によって金額は異なりますが、診断までにかかる料金は35,000円〜50,000円ほど。保険が適用されるので3割負担で済みます。
たとえば1カ月に1回通院して1年後に診断書を取得した場合、計50,000円かかったとしても1回あたり4,000円弱です。
50,000円 ÷ 12回(通院回数) = 4,167円
メモ
実際には診察だけの日もあれば診察+検査のときもあるので、そのときによって金額が異なります。
大きな負担にはならないことを知ってもらうために、あえて上記のような例を出しました。
一括で支払うわけではなく、診察や検査があるときに都度支払うことになるので、そこまで負担は大きくありません。
性同一性障害の診断書をもらったらできること
性同一性障害(正式には性別違和)の診断書をもらったら、様々な場面で活用することができます。
たとえば、つぎのような場面で使うことができます。
診断書で実現できること
- 本格的な治療に進める
- 将来的に戸籍の性別変更にも活用できる
- 学校や職場で配慮を求められる
- 家族や周囲の理解を得やすい
性同一性障害の当事者にとって、一番つらいのは本来の自分と一致しない身体、そして学校や職場などでの扱いだと思います。
筆者自身もそうでしたが、診断書がなければ思うように対応してくれないことが多いです。
きちんと医師の診断を受けることで、自分の心が軽くなるのももちろんですが、周囲の理解を得やすくなります。
学校の先生に話しても「診断書がないから」と、通称名の使用や男子の制服着用を許可してもらえませんでした。
できれば、早めに診断を受けることで後々困らずに済みます。
性同一性障害の疑いがあるお子さんのご家族の方がいたら、お子さんのためにも協力してあげてくださいね。
まとめ
性同一性障害の診断を受けられる場所や診断方法、診断にかかる料金などについてご紹介しました。
診断書がないとなかなか先に進めないことが多いですし、診断を受けていないときは不安が大きいですよね。
みなさんが少しでも生きやすくなれるように、まずははじめの一歩として診断を受けてみてください。